新人ディーラーがある場面で大きく売上を上げてオレの目の前に現れた。
「今の場面で、お客さんからディーラーチップを貰ったので、このチップを現金に換えて僕に下さい!」と言ってきた。
カジノ界で遊んだお客さんが、楽しんでくれた証に、ディーラーにくれるディーラーチップ。
ディーラーとしては嬉しいもので、普通にディーラーとしての仕事をしていたるだけで、お客さんが機嫌良くチップをくれるというのだ。
ディーラーチップについては店舗ごとにシステムが異なっており、貰ったディーラーが全額貰えることが好ましいが、なかなかその通りになる店舗は少なく、誰のおかげでその場にいられるのかを考えていくととても難しい。
基本的にお客さんがディーラーチップをくれると言うことは、勝負に勝利にして気持ちよく遊べたということなるが、その反面、誰かが(お客さん)負けているということ。もしくは、店側が負けているということに繋がってくる。
誰か(お客さん)が勝負に負けて、店側もプラスになるのであれば、そこまで問題にはならないのだが、店側が負けてマイナスを出したディーラーが、お金をもらうと言うことは考えにくくなってきている。
オレたちが全盛期の頃は、カジノ界の殆どの店舗が大きく儲かっていたので、ディーラーチップはその場面を仕切っていたディーラーが貰えていた。
大きな場面になれば、ディーラーチップの額も大きくなるので、1日で10万円分のディーラーチップを貰えることもあった。
裏カジノ店舗の体制をよくよく考えてみると、誰がお店をオープンさせたのか?誰がそのお客さんを呼んできたのか?誰のおかげでその場面に入ることが出来たのか?
など、ディーラーが1人だけで、ディーラーチップを貰える状況を作った訳ではないことになるのだ。
たまたま場面に入ったディーラーとの相性がよくて、お客さんが勝ち上がりディーラーチップを貰える状況になっただけにすぎない。
当時のオレも勘違いをしていたが、ディーラーチップはディーラーの腕前なのだと過信していた。
現在の裏カジノではディーラーチップをくれるお客さんがいても、気持ちだけ頂くという体制をとり、丁重にお断りする形をとっている店舗が多い。
もしくは、ありがたく頂き、従業員全員で分配をする、従業員のために使う方法をとっている。
ディーラーチップをくれと言ってきた少し天狗になりかけている新人ディーラーには、この説明をしておいたが納得していない様子だった。
確かに、アイツの立場になればオレも同じ様に思っていただろうが、今の時代ではコレが通らない。オレと同じ時代であればディーラーの時給もよかったし、待遇も環境もすごく良かった。
更には、お客さんの質も良く、何だかアイツが可哀想にも思えてしまう。
あの時代を知らないことだけが救いになるだろうが、カジノ界にも時代の流れはつきものなので、この時代でのスーパーディーラーになって何かを掴んで欲しいと応援したくなってしまう。。。