日本裏カジノ界のディーラーは常に成績がつきまとってくる。「ルーレット」に入っても、「バカラ」に入っても、場面を仕切っていきながらカジノディーラーとしても勝負をしていることになるのだ。
「ルーレット」では、新人ディーラーであれ、先輩ディーラーであれ、ボールを投げ込んだディーラーの成績になっていく。
このウィルに投げ込まれたボールが何所に落ちるのかをお客さんたちは考えながら賭けていくのだ。
「この投げ方ならこっち側にボールが落ちる!」、「今、ボールを弾いたのであっち側に落ちるだろう!」と予想していくため、この裏をかいた逆側へボールを落とすことが出来れば、ディーラーの勝ちとなり、ハズレに賭けてあるチップを回収することが出来てくる。
この繰り返しでディーラーが売上をつくりだし、カジノ店に収益が生まれていくのだが、いつも必ず勝っていけるほど甘い世界ではない。
ディーラーが皆、勝負に負けてくれば店側のチップでお客さんに配当をつけていくため、お客さんが勝ち上がり、店からついたチップを換金すれば現金でつけなければならない。
こうなるとお店が用意していたお金から現金でお客さんにつけるので、お店の収支はマイナスとなっていく。この金額が小さければよいのだが、ときとして、百万単位で負けることもある。
「ルーレット」では数百万単位の負けは殆どあり得ないが「バカラ」においては、ヒドいときに千万単位での負けもあり得るのだ!
ある日、新人ディーラーが$500バランスの場面に入っているとき店内がざわついていた。近寄ってこのテーブルの「罫線」を見ると殆ど真っ黒で、バンカーしか出ていないのが分かる。
プレイヤーが1回出たら次は数回のバンカー。またプレイヤーが出たら次からは数回のバンカーとなっており、バンカーのスダレ状態になっている。
誰が見てもバンカーだけに賭けていれば勝利は堅い状況で、毎回、バランスをオーバーをしてしまうため、慎重に均等なカット作業を行うので、新人ディーラーには時間のかかる場面だった。
ディーラーの前にあるチップボッックスの中には、$10,000は入っていた殆どチップが残っていない状態で、キャッシャーから新たに$10,000のチップが投入されていった。
毎回、プレイヤーよりもバンカーの方が$500多いということは、お店側はバンカーが出る度に$500づつマイナスしていくことになる。10回バンカーの方が多ければそれだけで$5,000のマイナス。20回バンカーの方が多ければ$10,000のマイナスはあり得ること。
「バカラ」1シュートの勝負回数は50回ほどだが、この場面を見る限りプレイヤーの出る回数は10回もないだろう。
投入したチップも一気に減り始め、シューターが終わってみると$13,000(130万円)のマイナスとなった。たかが1時間ちょっとの場面でこの金額のマイナスを作ってしまったのだ。
新人ディーラーとしては初体験だったので、お店に申し訳ない気持ちと「バカラ」の恐怖を味わう何とも言えない悔しい経験をした。
カジノ業界的に言えば、よくあることなので別に不思議はないのだが、新人ディーラーからすると、とんでもないことをしてしまったことの様に思えてくる。
このような苦い経験を積み重ね、強い心をもてるディーラーに育っていって欲しいところだ。。。