マレーシア・ペナン島への移住のために、、、家の売却やその他の準備を済ませながら、プロカジノディーラーとして勤務している、赤坂にある大使館裏カジノでのカウントダウンも始まっていた。
仕事へ行けば、あと数日でこの店舗を辞める事は関係なく、お客さんへの配慮もしながらいつものように実務をこなしていく。
店舗の調子もだんだんと上がり始めていたのだが、いまいち大きな収益へは結びついてこない。この店舗がオープンして約1ヶ月ほど経過しているのに、元金の回収はほど遠くて現状維持で廻っている感じだ。
経費を差し引いて数百万の利益ではオーナーも納得はしてくれないのがこの世界。
開店までに数千万をかけているので、早く元金の回収をして儲けに繋げていかなくてはならないのだが、肝心のVIP客が少なくては話にならないのだ。オレの知っているVIP客には、連絡を入れて来てもらってはいるが絶対数が足りなければ収益とはならない。
営業に力をいれながら、この大使館裏カジノを浸透させていかなくては、この店舗に未来は来ないため、経費をかけてでも多くのお客さんを呼び込んでいく。
裏カジノ界最後となるこの店舗の店構えは良いと思う。お金をかけているため見栄えも良いし場所も悪くない。多額を落としてくれるVIP客を呼べれば、この店舗は大化けできると確信を持っていた。
本当なら軌道に乗って元金の回収ができ、大きな儲けへと向かう姿を見たかったが、オレに残された日はもう無い。こんな思いを抱きながらも最後の日は訪れて来た。
いつものように出勤して、いつものようにお客さんを迎えながら実務をこなす。
そして最終日。従業員同士とバカな話をしながら時間が過ぎ、約15年近く働いてきた裏カジノ人生に幕が下りた。
終わってしまえばとてもあっさりとしている。
仲の良い仲間同士だけで、簡単な送別会を兼ねた飲み会、次の日の仕事を考えずに朝方から盛り上がってホテルに戻ったのは夕方だった。
裏カジノ人生はここで終了することになるが仲間たちと切れる事はないだろう。今後の裏カジノ情報も聞きたいしプライベートでもゴルフや麻雀などで付き合いは続いていくだろう。
オレの青春をすごしてた数々の裏カジノ店舗。。。ココには書ききれなかったというか、あまり覚えていない店舗もあったが、一体、何舗の裏カジノ店舗を廻ってきたのだろうか!?
今となっては楽しい事ばかりが思い出されてくる裏カジノ界。
オレの第二の人生はこのときから始まっていったのだ。。。